Wikipedia日本語版より引用
チャーガは、サルノコシカケ科に属するきのこの1種。和名はカバノアナタケ[1]で、学名はFuscoporia obliquaである。シベリア霊芝とも呼ばれる[2]。名前の由来は「古い幹にできる黒いきのこ様のコブ」を意味するロシア語の「チャガ」から来ていると報告がある。
解説
寒い地域で育ち、主な産地はロシアである。日本では北海道で発見することができたが、近年の乱獲により発見困難となっている[要出典]。主に白樺の木に寄生し、10-15年かけて成長する。見た目は黒くゴツゴツしたコブの様で、大きいものでは直径約30cmになる。この黒い物体は菌糸塊であり、子実体は樹皮の下で形成されるためほとんど視認は困難である。寄生された白樺は白色腐朽を引き起こす。
最終的に白樺の木の栄養分を全て奪い取って枯らしてしまうと考えられていたため、「白樺のがん」とよばれていた。しかし、研究が進むにつれて、チャーガの成分の健康効果が明らかになり、現在は発見困難な貴重なきのことして「幻のきのこ」「森のダイヤモンド」とよばれるようになった[3]。
チャーガは、ストレスへの抵抗能力を高めるはたらきがあるのでアダプトゲンとしても知られている[4]。ただしメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターによれば、チャーガの安全性、病気予防効果、がん・心疾患・糖尿病に対する治療効果を調べた臨床試験は存在しない[5]。
成分
チャーガには、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド、リグニンなどがバランスよく含まれている。また、有効成分としてβDグルカンとSOD酵素が注目されている。βDグルカンには、免疫細胞を活性化させ、免疫力を増強させる作用があると報告がある。チャーガに含まれるβDグルカンの量は、他のきのこに比べると多く、吸収率も高い。SOD酵素には、体の中の余分な活性酸素を除去するはたらきがある。過剰な活性酸素は、がんや老化、生活習慣病の原因になるため、SOD酵素を豊富に含むチャーガにはがん細胞を抑制する効果があると考えられている[3][6]。
健康効果
チャーガの健康効果に関する研究は、1951年にソビエト連邦科学アカデミー植物研究所と第一レニングラード医大の協力により始まった。当時のソビエト連邦では、臨床研究で効果が認められたチャーガを連邦薬局方指定公認の薬として使用していた。主に、手術不能のがん、胃や十二指腸の潰瘍、慢性胃炎、胃腸のポリープ治療に対し用が推奨されていた。国内外の研究報告により、チャーガには抗がん効果、免疫力の強化作用、活性酸素除去作用、抗エイズウイルス効果、抗インフルエンザウイルス効果、O-157などに対する抗菌作用、糖尿病や高血圧の予防と改善作用、アレルギー疾患の予防と改善作用、慢性肝炎や慢性腎炎の予防と改善作用などがあると考えられている[3][7]。
抗がん効果
チャーガにはβDグルカンとよばれる多糖類が豊富に含まれており、免疫細胞を活性化する効果を期待できる。また、SOD酵素とメラニン色素には活性酸素除去効果と抗酸化作用があるため、がん細胞を攻撃し、排除できると考えられている。メラニン色素には、遺伝子保護効果があることが知られている。このようにチャーガには、免疫力を活性化してがんへの攻撃力を助けるだけでなく、がんの原因となる酸化ストレス除去作用や傷ついた遺伝子の保護作用によって抗がん効果があると報告がある[8][9]。[10]ロシアからの報告では、乾燥したチャーガとその他のきのこをがん患者に投与したところ、チャーガを投与したグループにおいてがんの転移阻止率が高かったことが明らかになっている[3]。マウスを対象とした研究で、チャーガエキスを3週間連続で投与したところがんを60%抑制した。また、がん細胞の増殖や増殖に必要な新生血管を阻害したがんの進行を抑えることを確認した。チャーガエキスは体温を上昇させることも明らかになり、代謝を上げることによりがんの進行を抑制するのではないかと考えられた[11]。
抗ウイルス効果
1993年の日本エイズ学会でチャーガはがんだけでなく、エイズウイルスにも有効であると発表され注目を集めた。1999年には第51回北海道公衆衛生学会で、チャーガにはエイズウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスが体内で増殖するのを防ぐ効果があると報告された。チャーガに抗ウイルス効果がある理由として、リグニンという成分が考えられている。ウイルスがヒトに感染する時には、ヒトの細胞膜を溶かす酵素を出して侵入する。リグニンは、ウイルスが出す酵素を吸収し、ウイルスがヒトに感染するのを防ぐと報告がある[3]。細胞を用いた研究で、チャーガエキスを投与するとヘルペスウイルスの侵入を制御できることがわかった。チャーガはウイルスの糖たんぱく質に対して作用し、ウイルスの細胞内への侵入を防ぐことが明らかになった[12]。
アレルギー疾患抑制効果
マウスを対象にした研究で、チャーガエキスを投与するとヒスタミンの放出が抑制されアレルギー反応が低下することがわかっている[2]。アナフィラキシーショックを起こさせたマウスを対象にした研究で、チャーガエキスを投与するとアレルギーに関連するIgEのレベルが低下することが示された。チャーガが抗アレルギー効果のある食材である可能性が明らかになった[13]。
難治性皮膚病に対する効果
難治性の皮膚病である乾癬(かんせん)の患者に、チャーガエキスを服用させたところ皮膚や爪の症状が改善したという報告がある。詳細なメカニズムは明らかになっていないものの、チャーガの免疫増強作用や抗酸化作用によって体質が改善したことが関連しているのではないかと考えられている[14]。
副作用
チャーガは古くからロシアの家庭薬として親しまれてきたが、目立った副作用の報告はない。副作用を起すことは非常に稀だが、人によって合わない可能性もある[3]。
摂取の仕方
摂取の目安は1日約10-20gで、がんなどの治療中であれば体調に合わせて増量も可能である。自分でチャーガを細かく砕いたものをティーバッグに入れてお湯で煮出して飲む方法があるが、チャーガ茶として販売されているものもある。免疫細胞は寝ている間に作られるため、免疫を活性化する作用のあるチャーガは寝る前に飲むのが理想的である。継続して摂取した方が体調の改善を期待できる。効き目は早い人では1週間程度で、遅くても1か月程度で自覚すると報告がある[3]。
研究報告・論文
- 肝障害の改善効果(2015)
- ラットを対象とした研究で、チャーガエキスを酸化ストレスによる肝障害に対して投与したところ肝機能の改善を認めた。チャーガによる抗酸化作用によると考えられた。[15]
- 大腸がん細胞の増殖抑制効果(2015)
- 大腸がん細胞を対象とした研究でチャーガの成分であるエルゴステロールペルオキシドががん細胞の増殖を抑制することが明らかになった[16]。
- 脳腫瘍細胞の増殖抑制効果(2014)
- チャーガエキスに含まれる多糖類がヒトの脳腫瘍細胞の増殖を抑制することがわかった。腫瘍細胞の抑制は、チャーガが細胞死(アポトーシス)を起こすカスパーゼ3の発現を促進するからではないかと考えられた[17]。
- 炎症性腸疾患の改善効果(2012)
- 炎症性腸疾患を発症させたマウスに対しチャーガエキス投与したところ、炎症に関わる物質が抑制され、腸の炎症性病変を改善することが明らかになった。炎症性腸疾患に対するサプリメントとしてチャーガが有効である可能性が示された[18]。
- 認知機能障害の改善効果(2011)
- 認知機能に障害を起こさせたマウスに対し、チャーガを投与すると認知機能障害に関連する物質と酸化ストレスを抑制した。チャーガが、脳の学習や記憶などの機能に良い影響を与える可能性が示された[19]。
- 炎症性腸疾患患者のDNA障害の抑制効果(2007)
- 炎症性腸疾患患者のリンパ球を採取し、チャーガエキスを加えたところ傷ついたDNA数が減少することが報告された[20]。